1.器官培養による未分化間葉細胞の確認 胎生期に尿細管に分化する未分化な間葉細胞がどの時期から出現するかを調べる目的で、尿管芽が出現する胎生10日目から13日目までの後腎原基(または後腎形成が予定される部位)を採り、器官培養を7日間行い分化の進行を調べた。10日目胎仔の後腎原基の培養では尿管芽の腎組織内への侵入と分岐が見られ、尿細管への分化も見られた。このことから胎生10日目には、尿管芽上皮細胞との相互誘導により尿細管上皮細胞へ分化する未分化間葉細胞が既に存在することがわかった。今後この時期の後腎原基を用いて研究を進めたい。 2.形成後の腎におけるVEGFの役割 生後6週のマウス成獣に中和抗体を腹腔内に投与して内因性VEGF活性を抑制し、3日後に屠殺して臓器の変化を調べた。抗体投与後に糸球体血管内皮細胞は膨化しミトコンドリアの膨化もみられ、壊死の過程と考えられた。TUNEL染色では抗体投与による腎構成細胞のアポトーシスの増加はみられなかった。このことからVEGFは形成後の腎においては内皮細胞を壊死からまもる働きを持つと考えられた。このようにVEGFは腎の統合性の維持においても重要な働きを持つことが明らかになった。
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