研究概要 |
1)移植腎慢性拒絶反応における細胞外基質の関与を検討するため,慢性拒絶反応と診断した症例;35件,32例(男19例,女13例;平均41.8才)について蛍光抗体法・酵素抗体法でテネーシンの局在を検討した。非移植腎組織では糸球体係蹄にテネーシンの存在はみられなかった。荒廃糸球体は陽性であった。腎被膜直下皮質・髄質を主体とし,線維化の強い部の間質にテネーシンが存在した。移植腎では慢性糸球体拒絶反応の変化が強い部(係蹄の2重化等)・構造改変部に粗くテネーシンが認められた。糸球体血管極,ボ-マン嚢も陽性であった。間質では線維化の強い部に加え尿細管周囲・血管周囲・細胞浸潤部にテネーシンが陽性であった。尿細管には局在を認めなかった。細小動脈・小葉間動脈では中膜を中心に認められた。2)ついで,今後腎移植医療において使用頻度が増加すると思われるタクロリムス(FK506)による移植腎における腎障害の形態的特徴と,その結合蛋白であるFK506 binding protein 12 (FKBP-12)と腎毒性との関わりについて検討した.FK506を使用した21症例・41件の移植腎生検を対象とした.FKBP-12の局在は,2種類のモノクローナル抗体(2C1-87,3F4-70)を用い,PLP固定標本上でLSAB法にて検討した.近位尿細管のrough vacuolesや尿細管内微小石灰化を呈する急性FK506腎障害を25%に認めた.FK506腎障害のうち組織学的異常のない機能的腎障害を4例診断した.またFK506慢性血管障害は,術後1年以内に2例みられた.FKBP-12は遠位尿細管の核及び細胞質に巣状に強く分布した.ボ-マン嚢上皮・内皮細胞・小葉間動脈の平滑筋細胞にも弱いながら存在した.FK506腎障害の形態的特徴とFKBP-12の局在には,関係は認めなかった.
|