私たちは、マウスT細胞の細胞表面抗原解析により、新たな抗原を世界に先駆けて発見し、A1と命名した。その後、A1はNK細胞上にも存在すること、NKが標的細胞上の特定の主要組織適合抗原を認識するときにA1を使用すること、その際にA1は細胞内に負のシグナルを送ってNK細胞の活性を制御すること、シグナルには細胞内のITIMを使用することなどが判明した。後にA1はallotyicな分布を示すことより、Ly-49Aと命名された。私たちはこのリンパ球のLy-49Aの発現調節に興味を持ち、研究を進めてきた。まずTリンパ腫EL-4のLy-49Aのgenomic DNAを解析し、7つのexonより構成される蛋白であることを明らかにした。ついでLy-49Aの発現機構の解明を試みた。First exonの5'側を種々の制限酵素で切断し、reporter gene assayにより詳細に解析した。その結果、Ly-49Aの発現はそのモチーフが全く斬新な13個の塩基配列(13bp)により規定されていることを明らかにした。そこで、この13bpに結合する蛋白の遺伝子をEL-4より得られたCdna libraryを用いてSouth-Western法により解析した結果、発現調節蛋白のATFIIであることを明らかにした。そこでラット腎組織や、ラットより得た培養メサンギウム細胞におけるLy-49A遺伝子結合蛋白遺伝子ATFIIの発現をNorthern hybridizationにより確認したが、興味深いことにそのいずれにおいてもMrna発現が認められた。しかし、これら腎組織においてはLy-49A蛋白は認められない。正常リンパ球に於いてもATFIIのみではLy-49A発現に至らないことから、その発現にはさらに別のcofactorが必要なことが判明した。また最近、細胞内にITIMを有する蛋白は、共通のDNA結合蛋白の支配を受けている可能性が示唆されている。そこでITIMをタグとして正常ラット腎組織をクローニングした結果、Ly-49Aファミリーの一員で、Ly-49Aと同様に細胞内に負のシグナルを伝達するLy-49CのMrnaが検出された。このことは、腎組織におけるATFIIはLy-49Cの発現に直接関与していること、Ly-49Cにより伝達された負のシグナルを介して腎の細胞は恒常性を維持していることなどの可能性が示唆された。
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