研究概要 |
本研究の目的は、糸球体腎炎の進展過程におけるメサンギウム細胞の老化の意義を明らかにし、さらにその制御または誘導が糸球体腎炎の治療に関与しうるかを基礎的検討をすることにあり、細胞老化の指標としてテロメア、テロメア長に焦点を当て研究を進めた。本研究によって、(1)ヒト培養メサンギウム細胞の長期継代を行い、各々の継代時においてDNA抽出を施行したが、継代を重ねるに従いconfluentに至るまでの時間が明らかに延長することを明らかにした。またTeromere repeat probeを用いての抽出したDNAのSouthern Blotにより培養メサンギウム細胞におけるテロメアの確認に成功するとともにテロメア長が継代を重ねることによって短縮することを証明した。(2)メサンギウム細胞増殖の最も重要なメデイエーターであるPDGF-B鎖による増殖反応を培養メサンギウム細胞に起こさせた後におけるテロメア長とテロメラーゼ活性の変化を明らかにした。さらにこれらの変化はアポトーシス関連分子発現(Bcl-2,Bax)と関連していることを証明した。(3)老化と関係が深いとされる活性酸素との関連をみるために、過酸化水素下でのメサンギウム細胞の長期培養を行いテロメア長の変化を証明した。成長因子や活性酸素は腎炎の進展と密な関係にあることから、(2),(3)の結果はメサンギウム細胞の老化もアポトーシスとともに腎炎の進行に関与していることを強く示唆している。(4)上記の(1)-(3)を踏まえて、現在は実際にヒト腎生検組織を用いてテロメアおよびテロメラーゼ活性の検討を行い、糸球体の増殖活性および糸球体の硬化度との関連を明らかにしている段階である。さらにin situ Trap法を試み、テロメラーゼ陽性メサンギウム細胞の比率と糸球体障害進展度との相関をも明らかにしつつある。
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