研究概要 |
研究者らは挿入変異により新たに発生した内蔵逆位、嚢胞形成腎を有するトランスジェニックマウスの組織学的、分子生物学的検討を行ってきた。内蔵逆位、嚢胞形成腎がほぼ100%生じ、かつ膵臓嚢胞、胆道閉鎖などの上皮細胞の形成、機能異常が原因と推測される奇形を合併する。前年度に、ほぼ候補遺伝子の塩基配列が最終的に決定されたため、本年度は以下を研究目的とした。 1,すでにマウス inv遺伝子のクローニングに成功しており、その遺伝子配列を基にヒトでのhomologue遺伝子を単離した。 2,inv遺伝子の機能および解析を行った。上皮細胞の細胞質蛋白に類似する構造が認められており、尿細管形成そのものに如何なる影響を与えうるかを検討するため、発現ベクターをMDCK cellおよびLLCPK cellに遺伝子導入し、膜蛋白、主としてNa/K ATPaseなどの酵素活性、蛋白量発現を検討した。Na/K ATPaseのmRNA発現が亢進する傾向が認められた。 得られたcDNAを用いて胎生期マウスでin situ hybridizationを行い、発現時期、部位を検索、胎生15日から腎、肝を中心に発現が確認された。他には胎生期の網膜での発現が高度であった。塩基配列より予想されるアミノ酸配列に基づいて合成ペプチドを作製し、抗体を作製、ヒト、正常腎、嚢胞腎などでの染色性を検討する。抗体は尿細管の細胞質に染色性が認められた。また、ラットリンパ節法によりモノクローナル抗体を作製し、幾つかの候補クローンをsubcloningした。今後、fusion proteinを抗原として再度抗体を作製する予定である。
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