羊胎仔慢性実験モデル3頭を作成し羊胎仔の心電図、動脈血圧、呼吸様運動を連続的にモニターした。さらに母獣に低酸素ガスを吸入させることにより胎仔を急性の低酸素血症の状態に置くことにより以下の結果を得た。 1、胎仔血圧の変化;胎仔の血圧は低酸素血症により上昇した。低酸素血症の持続により血圧は低酸素負荷前の値に徐々に回復した。 2、胎仔心拍数の変化;胎仔の心拍数は低酸素負荷により減少した。1時間の低酸素状態の間、下降した心拍数は徐々に回復した。低酸素負荷解除後は一過性に心拍数は増加した。 3、胎仔心拍数細変動の変化;胎仔心拍数細変動(variability)は低酸素負荷により上昇した。その上昇は心拍数の低下に相伴う様に思われた。1時間の低酸素負荷中に細変動の大きさは変動しつつ低酸素負荷前の値に戻る様に変化した。 4、胎仔心拍数細変動の周波数分析の結果;心拍数細変動の周波数分析によりその低周波成分は低酸素負荷により増大した。高周波成分、超低周波成分も低周波成分の変化に伴う様に変化した。1時間の低酸素負荷中に上昇した低周波成分は低酸素負荷前の値より大きい値を保ちつつ増減を繰り返し徐々に低酸素負荷前の値に収束した。 以上により急性の胎児の低酸素症は心拍数細変動、その低周波成分の一過性の増大を引き起こすことがわかった。すなわち心拍数細変動の分析により胎児の急性の低酸素状態を推測する可能性が示された。より長時間低酸素負荷により心拍数細変動がどの様に変化するか今後さらに検討を重ねる計画である。
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