研究概要 |
我々は近赤外線領域の連続スペクトル測定装置(cNIRS)を用い、生体組織の光拡散効果による吸収スペクトルの平坦化を補正し、透過型スペクトルとして演算し、多成分解析時にbaseで光路長補正を行うことにより、ヘモグロビン(Hb)の一定光学的測定体積中の相対的濃度の算出を可能とした。Time Resolved Spectroscopy(TRS)システムのパルスレーザーは3波長(761,791と835nm)を用い、投光部受光部間距離を20mmで測定した時間分解波形により平筋光路長を計算し、更に光拡散方程式にfittingし散乱係数と吸収係数を求め、吸収係数より酸素化Hb、脱酸素化Hb、総HbとHb酸素飽和度(SO2)の絶対値を求め、これらをcNIRS測定の結果と比較検討した。cNIRSは大塚電子IMUC-7000を使用し、投光部reference間と投光部measurement間距離を10mm,20mmとした。 (1)1%intralipidを含む血液懸濁液によるin vitroの検討:窒素バブリング下で血液濃度が0.5〜3%まで総Hb量は、TRSとNIRSの値に有意な正の相関を認めた。 (2)新生仔豚を用いたin vivoの検討:吸入酸素濃度は一定とし、濃厚血液注入ないし生理食塩水での交換輸血による循環血液中のHb濃度を変化させる実験では、cNIRSとTRSで算出した脳内SO2は有意な正の相関を認めた。また両者で算出した総Hb量も、有意な正の相関を認めた。両実験で平均光路長は総Hbが増加するにつれ減少した。cNIRSとTRSで算出した脳内SO2や総Hbの絶対値が有意な相関を持つことより、cNIRSにより、in vivoでのHbが定量的に測定できることが明らかとなり、次年度にはcNIRSによる絶対値算出の検討を進めていく予定である。
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