研究概要 |
ブタサイログロブリンをリガンドとしたアフィニティカラムによりヒト血清から抗α1-3gal-抗体を分離精製した。この抗体を用いてブタ膵の凍結切片を通常の間接法で染色したところ,外分泌細胞,膵管,および血管内皮は染色されたが,ラ島そのものは染色されず,ラ島内の血管内皮は染色された。すなわちブタ膵のこれら染色された細胞上にはα1-3gal-抗原が発現しているが,ラ島顆粒細胞にはこの抗原が発現していないものと考えられた。ただしこの抗原の存在を否定するためにはより感度を上げた検索が必要であると考え,ABC法による免疫染色を行った。この染色結果でもやはりラ島そのものの染色(-)であり,ブタラ島にはα1-3gal-抗原の発現を認めなかった。また分離精製したブタラ島クラスターに対しても免疫染色を行ったがこちらの結果も同様に抗α1-3gal-抗体での染色(-)であった。しかしながら,これらの実験の際に同時に行ったヒト全血清を用いた免疫染色ではラ島顆粒細胞も染色された。このことから,ブタラ島にはα1-3gal-抗原以外の抗原の発現があり,ヒト血清中にはいわゆる抗α1-3gal-抗体以外の抗体が存在することが示唆された。この抗体のクラスを検討するために免疫染色を行った結果からは,ラ島に対する抗体はIgG,IgM,IgAのすべてのクラスに属することが確認できた。これらの抗体の関与するブタラ島クラスターに対する細胞傷害性および反応に関して現在検討中である。また,この際にADCCのメカニズムは働かないことが明らかになっているが,NK細胞の活性が上昇しているか否か,上昇しているとすればNK細胞によるラ島のdirect killingが起こるのかどうかも併せて検討中である。
|