研究概要 |
培養人臍帯静脈血管内皮細胞(以下HUVEC)と人分離好中球を用いて,好中球の血管外遊走における血管内皮細胞機能を検討した.HUVECを人羊膜上に培養し,この謨で上下に隔てたchamberを作製した.好中球を上室に,走下因子(leukotriene B4)を下室に添加して羊膜上のHUVEC下に遊走する好中球の数を組織学的に数えて好中球の血管外遊走を評価した.この系でHUVECをあらかじめmyosin light chain kinase (MLCK)の阻害剤,ML‐9で前処置すると好中球のHUVEC下への遊走が抑制された.また好中球のHUVEC下遊走に伴いactinのpolymerizationを認めた.そしてHUVECを放射性リンでラベルして行った免疫沈降法により好中球のHUVEC下遊走に伴いmyosin light chain MLC)がリン酸化をされることが明らかとなった.以上のactinのpolymerization,MLCのリン酸化はHUVECをあらかじめML‐9で前処置する抑制された.以上の結果より血管内皮細胞のMLCKにより好中球の血管外遊走がコントロールされているという結論を得た.また同じモデルを用いてPECAM‐1に対するモノクローナル抗体NlH31でHUVECに発現しているPECAM‐1を刺激したとき好中球のtransmigrationが約2倍に亢進することが明らかとなった. 今後の展望 培養血管内皮細胞にmonoclonal抗体NlH31を投与したときに,血管透過性が亢進するか,血管内皮細胞間のtight junctionが開放されるか,MLCがリン酸化されるか検討する.そしてこのことにより血管内皮細胞膜上に発現するPECAM‐1への刺激がMLCKの活性化を介して血管内皮細胞のtight junctionを開放することを証明したい.
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