研究概要 |
近赤外線分光装置による一酸化窒素濃度測定のため,全波長型近赤外線分光装置を改良し,ブローブを2つにすることにより左右同時測定が可能となるように装置およびコンピュータソフトを改良した。一酸化窒素をヘモグロビン溶液に飽和させ,一酸化ヘモグロビン規定濃度における近赤外領域の吸光スペクトルを測定してリファレンスとした。これによりin vitroにおいて一酸化窒素濃度測定が可能であった。 ウサギ虚血肢モデルにおける運動時虚血筋組織内一酸化窒素濃度測定を試みたが,in vitroで可能であった一酸化窒素濃度測定の解析は,in vivoでは困難であった。しかし酸素化ヘモグロビン,脱酸素化ヘモグロビンの測定は可能であることより,確立したウサギ虚血肢モデルにおいて,以下の結果を得た。ウサギ虚血肢モデルを正常食群と高コレステロール食群に分け,各々をセロトニン受容体拮抗物質投与群と対照群とに分けた。正常食群においては投薬群と対照群間に虚血回復時間(T1/2)の有意差は認められなかったが,高コレステロール食群では投薬群と対照群間において有意にT1/2が短縮していた。また正常食群と高コレステロール食群の対照群間では有意に高コレステロール食群が延長していた。いずれの群においても正常である左後肢のT1/2は虚血側肢と比較して有意に短くかつ群間による差は認められなかった。高コレステロール群では正常食群と比較して,血漿中セロトニン濃度が有意に高く,全血セロトニン濃度は有意に低かった。虚血肢モデルにおいて選択的セロトニン受容体拮抗剤が運動筋組織酸素動態を改善することを示した。 今回の研究により動物モデルにおいて臨床症例と同一の測定方法により虚血肢の運動時酸素動態評価を行い得ることが示されたことは,今後の臨床および基礎において薬効評価を行う上で有用であると考えられた。
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