研究分担者 |
細井 温 東京大学, 医学部・附属病院, 助手
小見山 高士 東京大学, 医学部・附属病院, 助手 (10292947)
安原 洋 東京大学, 医学部・附属病院, 講師 (50251252)
重松 宏 東京大学, 医学部・附属病院, 助教授 (40134556)
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研究概要 |
前年度までの検討から,近赤外分光法を用いて下腿腓腹筋部の脱酸素化ヘモグロビン量の歩行運動時における変化を測定することにより,運動時の静脈うつ滞程度と各種静脈疾患における臨床的重症度との間に強い相関が認められることが判明した。今年度は,これらの結果をもとに,深部静脈血栓症(DVT)発症後のpostthrombotic syndrome(PTS)症例において,DVT発症後からの静脈還流機能の経時的変化を近赤外分光法を用いて観察することにより,以下の結果を得た。 DVT発症後,平均8年を経過したPTS症例を対象とし,発症時の静脈血栓の存在部位および範囲の相違がその後の静脈還流機能にいかに影響するかについて検討した。血栓の存在部位は,下肢静脈を腸骨静脈,大腿静脈,膝窩静脈,下腿静脈の4つの領域に分割し,各領域の血栓の有無と近赤外分光法による測定上の静脈うつ滞程度との関連について検討した。まず,血栓の存在範囲に関する検討では,病変が1領域のみに限局している単独病変例よりも,2領域以上にまたがる複合病変例の方が,経過中の静脈うつ滞程度が有意に強いことが判明し,発症初期の血栓の範囲が広いほどその後の静脈還流障害が高度であることが確認された。また,各領域別に病変の有無により比較すると,膝窩静脈に病変を有する症例で静脈うつ滞が著明であった。このことから,初期に膝窩静脈血栓を認める症例では,DVT発症後数年を経てPTSに移行する危険性が高く,適切な初期治療と厳重なフォローアップが必要であることが判明した。さらに,超音波検査を併用し,血栓溶解後の逆流の有無を観察し比較したところ,膝窩静脈領域の血栓は,ほとんどが経過中に溶解し再疎通しており,弁破壊に伴う逆流を生じた例では有意に静脈うつ滞が強いことが確詔された。
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