大腸癌細胞が門脈血中で最初に肝類洞壁細胞(50%以上は内皮細胞)と接触し、肝転移がコントロールされると仮説を立て、大腸癌肝転移抑制メカニズムを検討し、前回若干の知見を報告した。つまり、肝類洞壁内皮細胞(SEC)の分離培養に成功し、これと大腸癌細胞(高転移性:CX-1、低転移性:Clone A)とのadhesion assayにてClone Aは、初期接着率は高いが、経時的に低下することを報告した。今回は、低転移性大腸癌の低転移性である所以に関して若干の知見を得たので報告する。【目的】肝転移抑制メカニズムを解明するため高転移性大腸癌株(CX-1)・低転移性大腸癌株(Clone A)と分離培養した肝類洞壁内皮細胞(SEC)との相互関係を検索する。 【方法】(1)スイスマウスからmetrizamide法によりSECを分離・初代培養する。(2)分離培養したSECとヒト大腸癌株(高/低転移性株)とのco-culture(1hr/24hr/48hr)による形態変化を検討する。 【結果】(1)Clone A(低転移性)の形態変化:1hr後-細胞は円形で形態的には何の変化も認められない。24hr後-細胞の形態は円形でaggregationの所見も認められない。48hr後-初めて2〜4個の細胞がaggregationする所見が得られた。(2)CX-1(高転移性)の形態変化:1hr後-細胞は円形でCloneA同様形態的変化は認められなかった。24hr後-細胞のaggregationしている所見が認められた。48hr後-ほとんどconfluent colonyを形成している所見が認められた。(3)コントロールの形態変化:Clone A/CX-1共に24hr後にはaggregationが始まり、confluent colonyの形成が見られた。 【考察】以上の結果より、低転移性大腸癌株はSEC存在下では成育できない可能性を示唆しており、adhesion assayでのClone Aの接着率低下に対する形態的証明になるもとの考える。SEC存在下で低転移性大腸癌株が本当に成育できないか形態的変化だけではなく、cell activityを検証する必要があり、現在 metabolic activityを計測中であると同時に、なぜ低転移性大腸癌株がSEC存在下では成育できないのかをnitric oxideの関与から検討中である。
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