目的:癌細胞膜に疎水結合しているCEA抗原がPhosphatidyl inositol phospholipase C(以下PIPLC)により選択的に切断・可溶化される可能性を種々検討してきた。申請者らは細胞質内CEA抗原を超音波により破砕・遊出(USPLC法)した場合の感度増強程度と併用による診断能向上の可能性を検討した。 対象:胃癌手術症例48例 方法:開腹直後にダグラス窩及び左横隔膜下腔内に50mlの生食水を注入・洗浄し可及的洗浄液を採取後、得られた沈渣を0.1Mリン酸緩衝液(PB)にて洗浄し1mlPB中に再浮遊させ、0.5単位のPIPLCを添加後超音波細胞破砕を併用(USPLC法)し、37℃120分間反応させた。判定は上清中のCEA濃度が非処置群に比べ1.6倍以上の感度増強を認めた場合を陽性と判定し、パパニコロ-染色による洗浄細胞診(CY)の結果と比較検討した。 基礎的検討:USPLC法は胃癌培養細胞株KATO-3 1.0×10^3個、MKN-45 1.0×10^2個が検出可能であった。これは、以前のPIPLC法に比べ5〜10倍以上の感度である。 臨床的検討:肉眼的腹膜播種性転移別に陽性率を検討するとP(+)10例の全てでUSPLC法でも陽性で、同時にCYで癌細胞の存在が確認された。P(-)38例の内、8例でUSPLC法が陽性で、内3例でCYが陽性であった。P(-)でCY陰性例中USPLC法陽性例が5例存在したが、何れも広汎T3症例で、腹膜播種性転移高度危険群と推察された。 結語:US法とPIPLC法を併用したUSPLC法は、腹膜播種性転移の客観的かつ鋭敏な早期診断法として有用である可能性が示唆された。
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