研究概要 |
【目的】申請者らは癌細胞膜に疎水結合しているCEA抗原がPhosphatidyl inosi-tol phospholipase C(以下PIPLC)により選択的に切断、可溶化される性質を利用した腹膜播種性転移(P)早期診断法(PIPLC法)を開発した。今回、さらに癌細胞の超音波破砕により細胞質内CEA抗原を遊出させる方法(USP法)と併用した場合の感度増強効果と臨床応用の可能性を検討した。 【対象】1993年1月から1998年5月までに当科で開腹した胃癌手術症例187例 【方法】開腹直後にダグラス窩、左横隔膜下腔に生食水50mlを注入、撹拌洗浄後回収し、PIPLCを添加した。また、同様にPIPLC添加後、超音波細胞破砕を併用し上滑中CEA濃度を測定し、非添加群に比べ1.6倍以上の濃度増強を認めた症例を陽性と判定し、洗浄細胞診(CY)の結果と比較した。 【基礎的検討】USP法は胃癌培養細胞株KATO-3 1×10^3個、MKN-45 1.0×10^2個が検出可能であった。これはPIPLC法に比べ5〜10倍以上の感度である。 【臨床的検討】(1)PIPLC法を施行した腹膜播種陰性87例中、7例(8.0%)がPIPLC陽性、そのうち2例はCYも陽性であった。また、USP法を施行した腹膜播種陰性74例中、11例(14.9%)がUSP陽性であり、USP,CYともに陽性が6例みられた。USP陽性,CY陰性例が5例存在したが、いずれも広範なT3,N4症例で腹膜播種高危険群と推察された。(2)PIPLC法、USP法と予後との関連をstageIII、IV症例で検討すると、PIPLC陽性・陰性例、USP陽性・陰性例の術後平均生存期間はそれぞれ457.3日、757.8日、246.4日、617.3日であり、陽性例の予後は不良であった。以上の結果より両検査法の腹膜播種性転移早期診断法としての有用性が示唆された。
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