【目的】申請者は先に、phosphatidyl inositol phospholipase C(PLC)の性質を応用した腹膜転移(P)早期診断法(PLC法)を開発したが、今回、超音波細胞破砕を併用した場合(USP法)の感度増強効果と臨床応用の可能性を検討した。 【対象】CEA産生胃癌細胞株(KATO-III、LoVo、MKN-45)および1993年1月から1998年5月までに当科で開腹した胃癌症例のうち、洗浄細胞診を施行した196例。 【方法】開腹時にダグラス窩と左横隔膜下に生食水50mlを注入、撹拌後回収し、PLCを添加した。USP法ではPLC添加時に超音波細胞破砕を併用した。それぞれ上清中CEA濃度を測定し、添加前の1.6倍以上の上昇を陽性とした。 【基礎的検討】CEAの局在様式が異なる胃癌細胞株KATO-III、LoVo、MKN-45についてPLC法とUSP法の成績を比較すると、cytoplasmic typeのKATO-IIIやMKN-45でUSP法の増強効果が高く、増強効果と局在様式との関連が推察された。USP法はKATO-III3×10^3個、MKN-45 1.0×10^2個が検出可能であった。 【臨床的検討】(1)P(+)例におけるUSP法の陽性率は94.1%と高く、T1症例での陽性率は0%であり、偽陽性、偽陰性が最も少なかった。P(-)例におけるUSP法、PLC法、CY法の陽性率はそれぞれ15.3%、9.5%、5.4%であり、USP法の感度が最も高かった。(2)全例でのCY法、PLC法、USP法による検討で、いずれの陽性群も陰性群に比べ有意に予後不良であった。(3)stageIII、IV且つCY(-)症例においてPLC(+)群とPLC(-)群の予後を比較すると、両群間に有意差がみられなかったが、USP施行例における比較では、USP(+)群がUSP(-)群に比べ有意に予後不良であった。以上の結果、USP法の腹膜転移早期診断法としての有用性が示唆された。
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