研究概要 |
担癌末期はSIRS類似の高サイトカイン血症状態で,好中球が過剰刺激され悪液質や臓器障害が誘起される。今回,好中球枯渇化抗体(RP3)を用い枯渇化療法の有用性につき検討した。血液浄化効果としては,CL活性,MCLA活性(活性酸素),サイトカイン(IL-6,IL-8,IL-10)などを指標とした。[方法と結果]臨床的検討:過去2年間に癌死した胃癌17例と大腸癌14例を対象に検討した結果,平均白血球数は17,000,好中球分画は87%と著明な好中球増多と血性IL-6 227(pg/ml),IL-8 87,IL-10 1,650の高値が観察された。実験的検討:GKS2腫瘍をF344ラット背部皮下へ移植すると6-8週目(担癌末期)には白血球数が38,000,好中球分画が49%,CL活性が3,700,MCLAが6,900count/sと有意の好中球数増多と機能の増加がみられた。一方,RP3で好中球枯渇状態にすると,担癌早期には腫瘍増殖促進と生存期間短縮が,末期には腫瘍増殖抑制と生存期間延長が観察され,担癌時期による好中球機能の二面性が示唆された。盲腸結紮穿刺(CLP)法による感染症モデルでは48時後に約50%が死亡し,血白血球数の有意の低下,CL活性の低下,MCLA活性(活性酸素)の増加が観察されたが,RP3前投与後CLPを行うと,MCLA活性は測定限界以下に低下し,24時間以内に全例死亡した。[結語]担癌末期,敗血症での好中球枯渇化療法の有用性が示唆され,サイトカインやスーパーオキサイドの過剰分泌を元から防止する血液浄化法への応用が期待された。
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