研究概要 |
1)好中球枯渇化抗体RP3と、好中球誘導作用を持つBRM(OK-432,G-CSF)を用いた、担癌状態における好中球枯渇化療法の有用性についての基礎的検討では、担癌早期に好中球を枯渇化すると腫瘍増殖が促進されたが末期では抑制され、好中球は担癌早期には抗腫瘍性に末期には増殖促進的に作用する可能性が示された。好中球は担癌時期あるいは骨髄由来か末梢血由来かにより多面性を示す可能性が示唆された。 2)臨床例における担癌末期症例の検討では、過去2年間に癌死した胃癌17例と大腸癌14例を対象に検討した結果、平均白血球数は17,000,好中球分画は87%と著明な好中球増多と血性IL-6 227(pg/ml),IL-8 87,IL-10 1,650の高値が観察された。 3)開胸を伴う食道癌手術例を対象とした、臨床例における高度侵襲手術群のサイトカイン変動における検討では、術前ステロイド非投与群ではIL-6,IL-8,IL-10の過剰産生が確認され、また術後合併症が認められた症例でその傾向が著明であった。 4)F344ラットの盲腸結紮穿刺法(CLP)による敗血症モデルにおける好中球枯渇化療法の基礎的検討では、単開腹(SHAM)群に比べ、白血球数は一過性に低下し、単位好中球当たりの活性酸素能は一過性に増加した。このモデルにRP3を用い、好中球枯渇化状態にすると、好中球数と貪食能は選択的に低下し、CL前投与あるいはCLP後8時間に投与した場合は生存率が低下したが、CLP後12時間に投与した場合は生存率で差はみられなかった。各処置後経時的に末梢血を採取し、LPSで刺激すると培養上清中にはIL-6およびIL-10がCLP後6時間目から検出され、24あるいは12時間をピークに漸減した。TNF-αはCLP前から存在し6時間で減少後、24時間まで漸増する2相性のパターンを示し、RP3の投与タイミングにより相反する結果を惹起する可能性が示唆された。
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