研究概要 |
各種BRN製剤のうちOK-432と1L-2を併用した局所免疫療法の抗腫瘍効果増強を企図して、Drug delivery systemの概念に基づきこれらの薬剤を含有したW/O型、W/O/W型エマルジョンを設計した。W/O型はBRM(OK一432,1L-2)水溶液にlohexolを加えたものとLipiodolを乳化し、W/O/W型はBRM水溶液にHCO添加lohexolを加えた内水相とLipiodolを乳化した後、これとゼラチン添加lohexolの外水相とを乳化する行程をシリンジを用いたパンピング法で簡便に調整でき、安走性、安全性に問題はなかった。SD系ラットのMRMT-1細胞(3-methylcholanthrene誘発易転移性乳癌細胞株)の肝転移モデルにおいて、BRMを含有するW/O型、W/O/W型エマルジョンの脾内投与法は従来のBRM水溶液に比べ、肝転移結節数は少なく、肝リンパ球の白己腫瘍に対する細胞傷害活性およびNK活性は高く、肝転移巣周囲へのリンパ球浸潤は顕著であった。BALB/cマウスのcolon 26高転移亜株の肝転移モデルにおいても、BRM含有W/O型エマルジョンの脾内投与はラット肝転移モデル同様抗腫瘍効果を増強した。肝表面の転移結節数は腫瘍移植後14日目で、BRM含有W/O型エマルジョン投与群は対照群に比べ有意に低値であり、肝リンパ球の自己腫瘍に対する細胞傷害活性の低下は軽度であり、肝リンパ球のNK活性は移植後14目目まで漸増した。病理組織学的検索でも肝転移巣へのリンパ球浸潤が著明であり腫瘍構築の乱れも顕著であった。肝転移巣の免疫組織学的検索では、BRM含有W/O型エマルジョン投与群は対照群に比べApoptotic index(アポトーシスの指標)は高値で、PCNA標識率(細胞増殖能の指標)は低値であった。以上より、OK-432とIL-2の徐放型エマルジョンの脾内投与は肝局所リンパ球の抗腫瘍活性を増強し、また腫瘍増殖能を抑制あるいはアポトーシス誘導を惹起して抗腫瘍効果をもたらし、その結果として肝転移を抑制する可能性が示唆された。
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