研究概要 |
癌局所免疫療法として、BRM製剤であるOK-432、IL-2を用い、その抗腫瘍効果増強を目的として、BRM製剤を含有するw/o型、w/o/w型エマルジョンを設計し、SD系ラットのMRMT-1細胞(3-methylcholanthrene誘発易転移性乳癌細胞株)の肝転移モデルにおいてBRM製剤を含有するw/o型、w/o/w型エマルジョンの腓内投与を行った。同量のBRM製剤を含有する水溶液と比べ、肝転移結節数は少なく、肝リンパ球の移植腫瘍細胞に対する細胞障害活性及びNK活性は高く、肝転移巣周囲へのリンパ球浸潤は顕著であった。BALB/cマウスのcolon26好転位亜株の肝転移モデルにおいても、BRM含有w/o型エマルジョンを用い、SD系ラットのMRMT-1細胞肝転移モデルの場合と同様の結果を示した。以上より、OK-432、IL-2含有エマルジョンの腓内投与が、肝局所リンパ球の抗腫瘍活性を増強し、抗腫瘍効果を発揮する可能性が示唆された。BALB/cマウス肝転移モデルに対してのBRM含有w/o/w型エマルジョン投与では、w/o型エマルジョンの場合とほぼ同様の結果を得つつあるが、エマルジョン作成において、当初に確認できた剤型の安定性が得られないケースが見られた。これは使用する薬剤(Lipiodol,Iohexol,HCO-60,gelatin)がラットでの実験系に比べ非常に微量となるため、混合比が正確に保たれ難いこと、使用するシリンジの違い等が考えられる。また臨床においてはLipiodolの転移巣集積が経過観察の妨げになり得ること、粘性抵抗が比較的低いw/o/w型エマルジョンにおいても細径カテーテルを用いた注入は困難である。作成、使用においてより簡便な剤型の検討は有用と考えられ、現在模索中である。
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