研究概要 |
ヒトIDDM(インスリン依存型糖尿病)の動物モデルである糖尿病自然発症BB-DP(diabetic prone)ラットを用いて全膵十二指腸移植(PTx)を行い、移植膵におけるIDDM再発(WF→DP;non-MHC,MHC適合)ならびに拒絶(DR(diabetic resistant)→DP)を再現した。さらに、同じ組み合わせで腎被膜下への膵島移植(ITx)を行い、再発および拒絶を再現した。また、それぞれのモデルに対して抗ICAM-1/LAF-1抗体による免疫抑制を行った場合、PTxでは再発ならびに拒絶が抑制され免疫学的寛容が成立したが、ITxでは同じ免疫抑制下においても再発ならびに拒絶を抑制することができなかった。WF→DPならびにDR→DPへのPTxモデルで免疫抑制にて寛容が成立したDPラットにおいては、末梢リンパ組織(脾臓)でドナー由来のマクロカイメリズム(donor-derived RT6+T cells;35-55%)が移植後60日以降誘導されていた。最近、免疫応答を制御する第4のT細胞であるNKT細胞(NK receptor;NKR-P1およびT cell receptor;TCRをともに発現している)が注目されており、本研究においてこの寛容成立の系で検討したところ、前記のRT6キメラT細胞中にNKT細胞が高率(20-30%)に検出された。さらに、これら寛容成立ラットの血清中のサイトカインの解析(ELISA法)では、IL-4が検出されたが、γIFNは認められなかった。また、再発ならびに拒絶モデルで検討すると逆にγIFNが検出されたが、IL-4は認められなかった。一方、ITxでは寛容ラットで認められた上記の事象は検出できなかった。以上より、BBラットに対するPTxおよびITxモデルにおいて、抗接着分子抗体投与により、ドナー由来のRT6キメラT細胞中にはNKT細胞が高率に誘導されており、その結果IL-4の産生によりTh2優位の免疫応答が誘導され、IDDMの再発が抑制される可能性が示された。
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