研究概要 |
血管外科における末梢循環障害および虚血再環流等における遠隔臓器障害の機序に遠隔臓器障害において、特に遠隔臓器にメディエーターを特異的に運搬する担体としての血小板マイクロパーティクル(MP)の存在意義を明らかにすることを目的としている。1996年には血小板をコラーゲンとトロンビンで刺激するときに血小板から放出されるPAFの80%が特異的にMPに結合はどのようになっているのかを検討した。その結果、コラーゲンとトロンビン刺激の場合と異なりPAFの産生量の・放出量とも低下しているが、この場合でも放出されるPAFの80%がMPに特異的に結合していることを明らかにした。1997年度は、より生理的と考えられるズリ応力下での血小板凝集に伴いPAFが放出されるのかどうか、その時MPへの特異的結合していることを報告した(Iwamoto,Kawasaki;BBRC239,101-105,1997)。従来、ケミカルメディエーターは単体で存在して血中ではすぐに分解ないし失活させる考えられてきたが、少なくともPAFはMPという担体を介して作用する可能性が高く、私たちが報告した事実は全く新しい概念を提唱するものであり今後遠隔臓器障害の機序の解明の解明に寄与すると考える。 次に、MPの標的細胞と推測される血管内皮細胞がズリ応力の刺激を受けた時に上昇すると考えられる細胞内Caの定量法の確立を行った(Yoshikawa,Kawasaki;Cell Calcium,22,189-197,1997)。この結果を利用してズリ応力下におけるMPの血管内皮細胞に対する作用を検討中である。また、静脈血栓症における高脂血症の関与に血小板が関与しうるかどうか、エピネフリンによる血小板凝集の反応性の違いがMP産生の違いに関係するのかどうかも検討中である(Kawasaki,Thromb Res,88 67-73,1997/Nakamura,Kawasaki;Thromb Res,22,189-194,1997)。
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