研究概要 |
血管外科領域の末梢循環障害および虚血再灌流時における遠隔臓器障害の機序としてケミカルメディエーターの存在がすでに明らかになっている。しかし、その運搬方法に関しては明らかでなかった。血小板マイクロパーティクル(MP)は表面に特異的リガンドを有しており、標的臓器に特異的にメディエーターを運ぶ運搬担体として最も可能性が高いことを私たちは明らかにしてきた。血小板から放出されるPAFでは80%が特異的にMPに結合している(BBRC218,940-944,1996;BBRC239,101-5,1997)。これらの結果は、ある種のケミカルメディエーターは担体中に濃縮されたまま標的臓器に運搬されるという全く新しい概念を提唱する。 平成10年度の実施計画(1)MP表面の凝固活性とPAF:MPによる凝固活性化をAPTT,PT,TEGにて検討したが、そのデータのばらつきが大きく使用不能であった。(2)他の細胞からMP様小胞が分泌される可能性:検討中に、血小板と白血球系細胞の結合が正常血液でも存在することが判明した。invitroの系と異なり、生体内では、ある種の血小板が白血球系細胞と接着しながら血流に乗っていると推測され、血小板反応の機序についての新しい概念を提唱できる可能性があることから最優先で検討中である。(3)血小板中のPAF以外のメディエーターがMPを担体としている可能性:アラキドン酸についてはPAFと同様であることが我々のPAFの報告後に他の施設より報告された。TxA2xおよび12-HETEについて検討した結果、PAFiほどではないが12-HETEもMPに結合していることが判明した。これに対して、同じ脂質でもTxA2は単体で存在する可能性が高い。(4)臨床病態との関係でin vitr0では、虚血時の内皮細胞障害(lkeda,Ariyoshi)、静脈血栓症や人工血管置換後の血栓形成(Kawasaki,Ariyoshi,Fujimura)、血小板p01ymorphismと血栓症(Fujimura)、Shearによる内皮細胞の防御(Shinoki)等MPが関与しうる病態の把握を同時進行させ、病態を選んでMPを測定する。今後、上記(2, 3)を中心に研究を進める予定である。
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