研究概要 |
末梢循環障害時の遠隔臓器障害において、遠隔臓器にメディエーターを特異的に運搬する担体としての血小板マイクロパーティクル(MPs)の存在意義を明らかにするとこを目的としている。 血小板に対するズリ応力下(108dyne/cm2)でのPAF産生とMPs放出との関係は、刺激6分までのMPsにはPAFは検出できなかったが、それ以降では血小板で産生されたPAFの80%がMPsに特異的に結合していた。計算上、MPsでは血小板に比して約30倍濃縮PAFがされていた(Iwamoto,Kawasaki,BBRC239,101-105,1997)。 ヒト血小板血漿をトロンビン+コラーゲンで刺激後のリポ蛋白分画におけるMPsとPAFを検討したところ、いずれもIDLとLDL分画に回収できた。非刺激血小板血漿のIDLおよびLDL分画にはPAFを検出できなかった。長時間の操作後もPAFが検出可能であることからそのようなMPs中のPAFはアセチル基水解酵素から守られている可能性が高い。またIDLおよびLDL分画中にはPAFを含有したMPsが存在する。また、この時、TxA2と12-HETEとMPsの結合を検討した結果、12-HETEはPAFよりは弱いがMPsに結合しているが、TxA2はMPsに結合せず単体で存在していた。 重症SIRS、消化器外科手術後、重症虚血肢では血行再建後の灌流時に、血小板(またはMPs)と白血球系細胞の結合の増加、血小板凝集能とMPs産生が亢進していた。今後、病態形成における意義を明らかにする必要がある。 また、アスピリン感受性における検討では、血小板の反応性が各個人で決定されていることを突き止めた。この新しい知見は、個人毎に適切なアスピリン投与量を決定できることを意味しており、副作用の低減、薬剤消費量の減少、そして具体的な疾病予防をおこなう上で画期的な知見である(Stroke,2000;31:591-595)。
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