研究概要 |
移植後にドナー特異的な免疫寛容状態を誘導することが移植医療の発展のための大きな目標である。従来より、肝内に抗原が集積することによって、その後にドナー特異的な免疫寛容を誘導出来ることが知られている。肝内に抗原が取り込まれると肝特異的な免疫反応が惹起され、移植片に対する応答が変化する事が観察される。そこで、肝特異的な免疫応答を解析するため、抗原投与後に肝を他のラットに移植するモデル(SLG)と、抗原投与後に肝を摘出し他のラットからの肝を移植するモデル(SLR)を作成して肝における免疫応答を検討した。 ドナー脾細胞をWSラットの尾静脈より静注し24時間後にSLG SLRモデルを作成した。投与抗原に対する免疫応答は、皮膚移植・心移植・CDC・DTHにて検討した。 抗原投与のみ群における皮膚移植・心移植片の生着日数はそれぞれそれぞれ8.2±1.1、10.7±2.3日であったのに対して、SLG群ではより短い期間で移植片が拒絶された(skin and heart,MST:5.5±0.5and4.2±0.8days),またCDC,DTH反応も亢進していた。一方、SLR群では生着延長が認められ(skin and heart,MST:16.5±2.6and29.5±3.7days)CDC、DTH反応も抑制されていた。 抗原移入後24時間の肝を移植した場合には抗原に対する強い反応が惹起され、肝を摘出した場合には反応が低下することが判明した。従って、抗原投与の肝において抗原に対する強い免疫反応が出現していることが明らかとなった。
|