DNA topoisomerase II(topo II)阻害剤は制癌剤として広く利用されている。Topo II阻害剤の作用機序として、従来は制癌剤がDNAとtopo IIと間に共有結合を形成し、この三者によるcleavable complexesがtopo IIの酵素活性(DNAの転写、複製)を阻害するとされてきた。しかし、complexを安定化させた後、これらの薬剤(complex-stabilizing topo II inhibitors)がいかなる機序で細胞死をもたらすかは現在不明である。近年complex形成を安定化することなく選択的にtopo IIの酵素活性を阻害する新しいカテゴリーの阻害剤(catalytic inhibitors)が数種発見された。われわれはcatalytic inhibitorであるmerbarone(MB)に対する耐性細胞株CEM/M70-B cellsをヒト白血病細胞株CEM cellsより樹立し、感受性親株と比較した。耐性細胞ではp53wtタンパクの発現が低下していたが、SSCP解析で新たなmutationは存在しなかった。同調培養細胞を用いた細胞周期の観察から、topo II阻害剤により選択的にG2/M期の移行が阻害されるが、耐性細胞ではその作用が弱く、この際p34^<cdc2>kinase活性は亢進していた。現在p53mt、cyclin B1のtransfectionによる感受性の変化を比較しており、また最近p53とG2/M期checkpointとの関連性が示唆されている因子、Ghk-114-3-3のmRNAレベルでの発現を同調細胞で経過を追って比較している。一方、臨床における消化器癌の検体を用いた免疫染色による検討で、cyclin B1とp53発現の低下が相関している結果を得つつある。
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