異種移植免疫よりのブタラ島防禦を目的として我々は免疫隔離膜を開発し、異種ブタラ島移植の臨床応用を目指し、膵全摘による糖尿病犬をレシピエントとして、免疫抑制剤非存在下にてブタラ島移植実験を行った。用いた免疫隔離膜は、細胞性免疫隔離能とC3の消耗による補体第二径路の不活性化能を有するagarose/polystyrene sulfonic acid+polybrene+carboxymethyl cecullose(APPC)カプセルからなり、ブタラ島をもちいたバイオ人工膵を作製した。 【方法】約100kgの成ブタより膵体尾部を摘出し、膵管内コラゲナーゼ溶液を注入し、膵組織を消化した後、ファイコール密度勾配遠心法にてラ島単離した。単離ラ島を、岩田らの方法を用いAPPCマイクロカプセル化ラ島を作製し、5匹のレシピエントに腹腔内移植した。対象群として裸のブタラ島を2匹のレシピエントに移植した。術後の血糖管理は、空腹時血糖値が、200mg/dlとなるようにインスリンを投与した。【結果】裸のラ島移植群では2匹とも正常血糖値は得られず、移植後のインスリンオフの期間は認めなかった。一方、マイクロカプセル化ラ島移植群では、5匹中2匹において、インスリンオフの期間を14週間、7週間認め正常血糖を維持した。マイクロカプセル化ラ島移植群において、5匹全例に、ブタCPRが陽性となったが、裸のラ島移植群においては、2匹とも陰性であった。【結語】APPCマイクロカプセルは異種ラ島移植において免疫隔離能を有することが確認できた。 以上より、異種バイオ人工膵の臨床応用に向けてのpreclinical studyをおこないその有用性を明らかにした。今後、ラ島単離手技・移植手技の改善を加え、更なる成績向上を目指したい。
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