研究概要 |
I.単離成ブタ膵ラ島浮遊液にFITC標識GSIB4レクチンを加え、共焦点レーザー顕微鏡にてαGal抗原の発現を観察し、膵ラ島細胞にはαGal抗原の発現がみられなかった。一方、共焦点レーザー顕微鏡にて自然抗体の反応性を観察し,ヒト血清中にはブタ膵ラ島に接着する異種自然抗体が存在した。以上より、成ブタ膵ランゲルハンス島は異種抗原の発現が弱く、ヒト血清中の異種自然抗体の接着性も弱いことより、ブタ-ヒト間膵ラ島移植においては抗原抗体反応を介した超急性拒絶反応は惹起されない可能性が示唆された。 II.免疫担当細胞は膜透過しない単独アガロース膜と、細胞性免疫隔離能とC3の消耗による補体の不活性化能を有するAPPC膜を用い、新生仔ブタラ島長期生着のために必要な膜特性を糖尿病マウス移植実験にて検討した。アガロースマイクロカプセル化ラ島の平均生着期間は0日に対し、APPCマイクロカプセル化ラ島の平均生着期間は13日であり、有意に生着延長効果が認められた。以上より、免疫隔離使用下での新生仔ブタラ島の長期生着には、補体活性の制御が必要と考えられた。 III.上記の実験結果を踏まえ、APPCカプセル化異種ブタラ島の大動物移植実験を行った。裸のラ島移植群では2匹とも正常血糖値は得られず、移植後のインスリンオフの期間は認めなかった。一方、マイクロカプセル化ラ島移植群では、5匹中2匹において、インスリンオフの期間を14週間、7週間認め正常血糖を維持した。マイクロカプセル化ラ島移植群において、5匹全例に、ブタCPRが陽性となった。以上より、APPCマイクロカプセルは異種ラ島移植において免疫隔離能を有することが確認できた。 異種バイオ人工膵の臨床応用に向けてのpreclinical studyをおこないその有用性を明らかにした。今後、ラ島単離手技・移植手技の改善を加え、更なる成績向上を目指したい。
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