研究概要 |
転移性肝腫瘍は,大腸癌死因の約1/3を占める重篤な病態で,その機構の解明が必須である。癌細胞の転移形成には,癌細胞の浸潤・血管新生・接着・増殖などの諸段階が存在する事が判明し、遺伝子異常・各種増殖因子の関与も報告されてきたが,依然そのメカニズムの詳細は不明である。"大腸癌の浸潤・血管新生・転移の成立には、正常組織成分である間質組織、特にマクロファージ・線維芽細胞が重要な役割を果たしている"との仮説のもとに、悪性腫瘍と間質細胞との相関関係を臨床検体及び細胞株を用いて組織浸潤・血管新生について検討した。【研究成果】1.大腸癌細胞株及び正常大腸粘膜由来線維芽細胞を用いて組織浸潤因子であるMMP-2,-9及びその調節因子であるTIMP-1,-2発現を検討した。MMP-2mRNA発現は大腸粘膜線維芽細胞においてのみ検出され、大腸癌細胞は発現していなかった。MMP-9は、大腸癌細胞株及び線維芽細胞いずれにも発現していなかった。一方TIMP-1,-2mRNAは検討した3株いずれにも認められたが、正常大腸粘膜線維芽細胞は、大腸癌細胞に対し強発現を示した。2.大腸癌手術材料を用いて血小板由来血管内皮増殖因子(PD-ECGF)の発現細胞の同定と発現調節の検討を行った。PD-ECGF蛋白は、腫瘍細胞間質及び最進部周囲間質に過剰に認められた。PD-ECGF mRNAは、腫瘍細胞及び間質に認められたが、主に腫瘍間質の線維芽細胞及びマクロファージに高度発現を認めた。3.大腸癌の癌過程における血管新生因子発現を検討した。大腸腺腫60例(軽度異型20例、中等度異型20例、高度異型20例)及びcarcinoma in adenoma(CIA)20例を検討した。炎症性,過形成性ポリープにおいてPD-ECGF発現は認められなかった。腺腫・CIA・癌において腫瘍細胞に発現を認めた。更に腺腫において細胞異型度が高度になるに従い陽性細胞の占める割合は増加した。【結論】大腸癌浸潤・血管新生に主要間質成分である線維芽細胞及び単核細胞であるマクロファージ細胞が、癌細胞以上に重要な働きをしていることを、細胞株及び臨床材料を用いた実験により明かにした。
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