内皮細胞と好中球のローリング現象を模倣した非静止下の接着実験系で接着阻害をおこす糖鎖薬剤を同定し、それを用いてエンドトキシン血症による肺組織への好中球浸潤に対する効果を検討した。 具体的には、ヒト臍帯静脈内皮細胞をエンドトキシンで刺激し、糖鎖薬剤を投与し、好中球を加えて、37℃、20分、80rpmの非静止下接着の条件で接着した好中球数をミエロパーオキシダーゼ活性で評価した。 その結果、ヘパリン、デキストラン硫酸が好中球の接着を有意に抑制し、セレクチンの抗体を用いた検討でこの接着にはE-セレクチン、L-セレクチンが関与していることを明らかにし、ヘパリンはL-セレクチンが関与する接着を阻害し、デキストラン硫酸はE-セレクチンが関与する接着を阻害することを明らかにした。そして敗血症やエンドトキシン血症などでは内皮細胞上にE-セレクチンが誘導されることから、ラットを用いてデキストラン硫酸を前投与してエンドトキシンを投与し、エンドトキシン血症による肺組織への好中球浸潤に対する効果を検討したが、明確な抑制効果は確認できなかった。 次年度は低分子ヘパリン、アンチトロンビンIIIなどの接着抑制効果を検討し、vivoでの抗炎症効果を検討する。
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