研究概要 |
本研究は,ヒトc-erbB-2癌遺伝子産物のextracellular domainを認識するマウスモノクローナル抗体(mAb)のantigen-binding sequenceをヒトIgG1のvariable-region frameworkに組み込むことにより作製したヒト型化mAb(rhu4D5)と抗癌剤との併用効果を解析し,臨床応用の基礎検討を行うことを目的としている. 【材料および方法】c-erbB-2癌遺伝子蛋白高発現株としてヌードマウス可移植性のヒト胃癌細胞株4-1STを用いた.抗癌剤は,CDDP(シスプラチン)を用いた.約3mm^3の腫瘍片をSCIDマウス皮下に移植し腫瘍が100-300mm^3腫瘤に発育した時点で,抗癌剤あるいは抗体をマウス尾静脈より静注し週2回腫瘤径を測定し21日間観察した.次に,同様の担癌マウスを抗体投与群と非投与群にわけ,CDDPを投与して血中および腫瘤内Pt濃度を経時的に測定した.【結果】rhu4D5とCDDPを併用した場合には相乗的な増殖抑制が認められた.この間マウス体重の減少やマウスの衰弱は認められなかった.血中Pt濃度は,抗体投与群と非投与群とで差を認めなかったが,腫瘍内Pt濃度は抗体投与群で有意に高かった.【考察】c-erbB-2癌遺伝子産物に対するヒト型化mAbと抗癌剤を併用することによりヒト固形癌に対するin vivoにおける抗腫瘍効果を増強することをヒト腫瘍SCIDマウス移植系を用いて明らかにした.ヒト型化mAbとCDDPの相乗効果のひとつの機序として腫瘍内Pt濃度の上昇が考えられた.今後は,この実験系を用いてマウス体内や腫瘍内におけるrhu4D5や抗癌剤のpharmacokineticsを解析し,この効果増強作用のメカニズムをさらに明らかにしたい.
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