研究概要 |
日本家兎の大腿動脈を用い、吸収性素材が血管内皮に与える影響を調べた。血管周囲剥離(コントロール)群、吸収性糸(ポリディオキサン)を血管内膜まで1針縫合した群、非吸収性の糸で同様に縫合した群、の3群に分けた。1群5羽とし、それぞれ2,4,6,8,12週で採取、血管内膜の肉眼的所見及び光学顕微鏡による組織学的所見を比較観察し、縫合糸周囲の単位面積あたり炎症細胞数を検索した。非吸収糸群では吸収糸群に比べ、縫合糸周囲に生じる炎症細胞の持続カが観察された。吸収糸群では縫合後2〜4週間で縫合糸周囲の血管内皮は盛り上がり、4週より縫合糸直上の内膜に裂溝が形成され次第に内膜が平坦化した。非吸収糸群では4週より縫合糸が血管内へ露出していくのが観察されたが、吸収糸群では血管内皮からの距離が変わらず次第に吸収された。 この実験により、吸収性縫合糸群は炎症細胞の浸潤が軽度で、素材の吸収のため組織への浸襲が少なく、微小血管においてもgroing besselヘの縫合、連続縫合の有用性が示唆された。 以上の報告を第7回日本形成外科基礎学術集会(於;香川)で発表した。 次にプリサイズのリング部はポリディオキサンで作成することができたが、より糸を加工するため口径が2mm以下の物が作成困難であることが分かった。また、血管を反転して引っかけるプリサイスのピンをポリディオキサンで使用したが、同素材は直径が細くなるとその硬度が著しく減少するため、血管を反転して支えるだけの強度が得られないことが分かった。現在、ポリ乳酸を用いてプリサイスのピンの開発を行い、実験を行っている。
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