研究概要 |
研究代表者らは乳癌組織よりT-loop欠損型CDC2 variant(CDC2ΔT:本研究計画調書ではΔCDC2と記載)をクローニングし、その機能解析を行うと同時に他のCDKファミリーに同様なvariantが存在するかどうかを検討した。CDC2ΔTのC末端にHA-tagをつけ、pcDNA3 vectorに挿入し、pcDNA3-CDC2ΔT-HAプラスミドを作成した。CDC2ΔT-HAをCyclin B1あるいはp21 CDK inhibitorとともにHala細胞に一過性発現させ、それぞれのタンパク質との結合を35S-標識免疫沈降反応法、免疫沈降-ウェスタンブロット法にて、またこれら免疫複合体のキナーゼ活性をHiston-H1を基質としたキナーゼアッセイにて解析した。CDC2ΔTはcyclin binding site,ATP binding siteが保たれているにもかかわらず、Cyclin B1,p21との結合能がなく、キナーゼ活性を持たないことから、T-loopがCyclinとの結合およびキナーゼ活性に必須であることが示された。他のCDKファミリーの解析から、CDK2にやはりT-loopのC末端側の一部を含む、34基のアミノ酸を欠失したvariantが存在することが判明した(CDK2ΔT、#AB012305)。これらvariantsの細胞周期、あるいは癌化における生物学的な意義は不明であるが、今後CDC2,CDK2の各domainの詳細な機能が解明されると共にこれらの機能も明らかになるものと思われる。
|