研究概要 |
切除不能胆道癌症例に対する養子免疫療法に着目し、腫瘍特異的抗原に対する抗体とスーパー抗原とを合成した上でLAK細胞に併用する独自な免疫療法に着目し、基礎的研究を行った。Effector細胞としてLAK細胞を用いた。腺癌関連の糖蛋白抗原であるMUC1の抗体・MUSE11およびそのF(ab′)2と、スーパー抗原であるSEAを化学的にSEA-MUSE11,SEA-F(ab′)2の形に合成した。標的細胞には当施設で樹立した肝外胆管癌細胞株(TFK-1)と肝細胞癌細胞株(HT-17)を使用し、前述した各種抗体を用いた際の標的細胞に対するLAK細胞のターゲッティング能および細胞傷害活性の増強効果について検討した。 FACSによる解析ではSEA-MUSE11およびSEA-F(ab′)2はMUSE11側がTFK-1に強く反応し、SEA側がLAK細胞のMHC class II分子に反応して癌細胞とLAK細胞とを架橋することが明らかになった。MUSE11単独,SEA単独,SEAとMUSE11を混合しただけのSEA+MUSE11、SEA-MUSE11およびSEA-F(ab′)2をそれぞれ用いたときのE/T比5の細胞傷害活性(48hr MTS assay法)の検討では、SEA-MUSE11群およびSEA-F(ab′)2群において0.01μg/mlの低濃度から60%前後の高い細胞傷害活性が認められた。またSEAであらかじめ刺激したLAK細胞は癌細胞に対する細胞傷害活性を上昇させることも示された。さらに、ウサギ抗SEA抗体およびMUSE11によるblocking testと、コントロールとして用いたHT-17に対する細胞傷害活性の検討により、合成抗体由来の傷害活性の肝外胆管癌細胞株(TFK-1)に対する特異性が確認された。SCIDマウスを用いて治療実験モデルを作成し抗腫瘍効果を検討した。すなわち、TFK-1を皮下に生着させたSCIDマウスに、2μgの各種抗体を加えて1時間4℃でincubateした2×10^7個のLAK細胞とIL-2(500IU)を4日間連続尾静脈内に投与し、皮下腫瘍径を10週間測定した。また、各群ともに15匹から25匹のマウスを使用し、それぞれの腫瘍質量を換算した。その結果、SEA-MUSE11群とSEA-F(ab′)2群においてのみ早期から著しい抗腫瘍効果が認められ、その効果は観察期間中を通して持続した。最終的には腫瘍の完全消失は認められなかったものの、コントロール群に比して約70%の腫瘍増殖抑制が得られた。
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