研究課題/領域番号 |
09671278
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
砂村 眞琴 東北大学, 医学部附属病院, 助手 (10201584)
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研究分担者 |
渋谷 和彦 東北大学, 医学部附属病院, 助手 (70260429)
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キーワード | 血管新生 / 局所環境 / マトリックス・メタロプロテネース / IL-12 / Eセレクテン / VEGF |
研究概要 |
腫瘍血管新生をターゲットとした戦略が新たな癌治療法として注目を集めている。フマジリン誘導体やマトリックス・メタロプロテネース阻害剤が既に臨床治験に入り、その結果に関心が高まっている。 本研究は、新生血管に特異的に発現し血管新生過程に重要な役割を担っていると報告されている、インテグリンαvβ3に関する基礎研究である。すなわち、マウスに作製した腫瘍血管のαvβ3発現を評価し、これをターゲットとして腫瘍血管新生をコントロールし、腫瘍の増殖を抑制する治療法を開発することを目的としている。 まず、in vivoの系で腫瘍血管新生を評価するために、マウスの背部に透明窓を作製し、経時的に新生血管の発育を観察可能な生体顕微鏡観察システムを確立した。さらに、ビデオに録画した画像をコンピュータシステムに取り込み、新生血管形成過程を数量化する解析方法を考案した。 同時に、マウスのインテグリンαvβ3に対する抗体を入手し、マウス腫瘍を免疫染色したが、残念ながら良好な染色結果が得られなかった。また、中和抗体を用いて腫瘍増殖に対する抑制効果を検討したが腫瘍の増殖には変化が認められなかった。残念ながら、これまでSan DiegoのScrippsから報告された実験結果は再現できていない。 そこで、αvβ3抗体の使用を断念し、マトリックス・メタロプロテネース阻害剤、IL-12、合成糖鎖の血管新生抑制効果を検討したが、いずれもが血管新生抑制効果を有することが判明した。これらの研究成果は本報告書に記されているが、特に以下の点を強調しておきたい。1)マトリックス・メタロプロテネースは従来癌細胞の浸潤に関与し、転移巣の形成を促すとされていたが、血管内皮のmigrationとmaturationに重要な役割を担う、2)細胞性免疫応答を介して抗腫瘍作用を発揮するIL-12には、強力な血管新生抑制作用が存在し、この作用はIFN-γを介している、3)E-selectinには血管新生促進作用が存在する、ことである。本研究の成果により、今後多彩なプロジェクトの展開が期待でき、既にVEGFやBAIIなどを用いた血管新生をターゲットとした癌に対する遺伝子治療の開発に向けて研究が進んでいる。
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