研究概要 |
従来の臨床病理所見による癌悪性度判定だけでは、癌患者の予後を正確に予見することは現在不可能であり、これは化学療法、放射線療法の効果予見の不確実さと相まって、癌の集学的治療の限界である。今回は食道癌に関わる新しい予後因子の開発と複数の分子生物学的マーカーの組み合わせによる食道癌患者のより正確な悪性度の判定、さらには抗癌剤に対する感受性を分子生物学的に解析することを目的とした。 [結果] 1.int‐2遺伝子が食道癌の予後と相関することを見いだし、原発巣で増幅がみられなくとも、リンパ節転移巣では100%増幅がおこっていることが判明した。 2.食道癌培養細胞株(TE series 7種)を用いた抗癌剤感受性試験では、CDDPに対する感受性には多様性が認められ、TE5,3,4,8,9,2,1の順に感受性が高かった。 3.これらの遺伝子変化をapoptosis関連遺伝子を中心にNortharn blotting,RT-PCRにより解析してみると、bcl-2は全細胞株でほとんど発現なし、bax,bcl-xlは多様性は認めたものの、感受性とは相関なかった。 4.TE‐4のみでapoptosisの負の因子であるFAP-1の発現が低かった。 5.CDDPとの接触により、Fas発現増加が観察された。 以上より、apoptosis関連遺伝子とCDDPの感受性には相関がないものと思われた。しかし、CDDPによりapoptosis signalを制御できる可能性がしめされた。
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