本研究は術中に腹腔内に存在する微少な胃癌細胞を癌細胞に高度な特異性をもつテロメラーゼ活性を測定することで検出し、胃癌切除後の腹膜再発の高危険群を同定しようするものである。本研究により腹膜再発の予測が可能となれば、再発の高危険群には術後早期からの化学療法の導入など、治療の個別化が可能となり、予後の向上につながるものと思われる。 平成9、10年度の2年間は細胞診の結果とテロメラーゼ活性との相関を検討した。すなわち、漿膜浸潤(±)〜(+)と判断される胃癌症例22例につき開腹時に左横隔膜下、右肝下面、ダグラス窩の3ヶ所に生食100mlを注入し、30mlを細胞診、50mlをテロメラーゼ活性測定用に採取した。また、胃癌術後癌性胸膜炎患者1例の癌性胸水および2例の術後ドレーン排液につき、同様の検討を行った。細胞診はパパニコロウ染色にて検討、テロメラーゼ活性測定用検体は遠心分離、細胞成分をペレットとして採取、凍結保存した。一定量の検体が集積された時点で凍結保存検体を解凍し、TRAPアッセイ(Oncor TRAP-eze^<T.M>テロメラーゼ活性検出キット使用)手順に従い、テロメア伸長反応とPCR法によるテロメアの増幅後、その産物を電気泳動に供し、テロメラーゼ活性の有無を確認した。 結果:細胞診陽性20検体中、テロメラーゼ活性陽性は3検体のみと、検体中の微少癌細胞の検出にはテロメラーゼ活性測定の方が細胞診よりも鋭敏であろうという当初の予想に反する結果であったが、他方、細胞診陰性56検体中、テロメラーゼ活性陽性を4検体に認め、本研究の意義を支持する結果も得られている。 明年度以降はさらに症例を追加して同様の検討を行うとともに、特に後者の患者予後と再発形式などにつき追跡調査を行う予定である。
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