研究概要 |
【目的】多段階発癌は胃癌においても示唆されているが,大腸癌の場合と異なりK-rasの異常もAPC遺伝子の変異も少ないとされている.したがって別の未知の遺伝子の変異が必要と思われる.ところで高頻度の染色体の欠失は癌抑制遺伝子の存在を示唆しており,我々の教室では大腸癌を対象として14番染色体q32領域の欠失の詳細な検討を行ってきた.その頻度は約40%に上ることからこの領域に癌抑制遺伝子の存在が推測された.この領域の欠失は大腸癌以外では腎癌で核型解析により,神経芽細胞腫ではRFLP法により50〜30%の頻度で報告されており,本領域に推測される遺伝子はこれらの腫瘍に共通すると思われる.しかし胃癌も含め他の消化器系の腫瘍での検討は行われていない.そこで14番染色体の大腸癌と共通の領域に胃癌においても欠失が起きていないか検討した. 【方法】手術標本より採取した58症例60サンプルの胃癌組織および正常胃粘膜を凍結保存.フェノールクロロホルム、プロテネースK消化法を用いてDNAを抽出した.それぞれに対して14番染色体q24-32領域の4個のマイクロサテライトマーカーを用いてPCRを行った.PCR条件はtemplate DNA 100ng,reaction mixture containing buffer 10ml(50mM KCl,0.01% gelatin,3.5mM MgC12,and 10mM Tris buffer,pH8.3),0.3 units Taq polymerase(Perkin Elmer),200mM each deoxynucleotide triphosphate,10pmol each primer.基本的に35回の反応をおこなった.ヘテロ接合性の検出は非RIによるSSCP法で検出した. 【結果】60検体中54検体がimformative.31検体(51.7%)に少なくとも一ヶ所のマーカーでLOHを確認した.現在再検中であるがD14S68,D14S62,D14S65において50%前後、D14S250で約30%のLOHを認めた.その欠失領域は大腸癌と共通しており,未知の癌抑制遺伝子が存在するなら両腫瘍に共通すると思われた.今後は検討するマーカーを増やし共通欠失範囲をせばめる予定である.
|