研究概要 |
独自に確立した腹膜高度転移株(MKN-45-P)を用い、in vivo,in vitroの実験系で腹膜播種の発生機構の解明のための実験を行い以下の成績を得た。 1)高度転移株をヌード マウスの腹腔内に移植し、腹膜播種の形成過程を電子顕微鏡、免疫組織学的手技を用いて検討するとともに、腹膜のどの部位に最初に転移が出現するかをヒトベータ-globin特異primerを用いPCRで腹膜各部位のmicrometastasisを検出した。その結果、最も早期に播種が出現する腹膜は大網であり、横郭膜、腸間膜、卵巣、肝臓被膜がその後侵された。 また腹膜播種巣からRNAを抽出、転移関連遺伝子の発現をRT-PCRで解析した。転移関連遺伝子としては細胞外マトリックス分解酵素(urokinase,matrix metaloproteinasesおよびそれらのrecptors,inhibitors)、接着因子(integrin,E-cadherin,CD44)、増殖因子receptors(erbB-2,EGFR,c-met,AMFR,estrogen receptor)、血管増生因子(VEGF,VEGFC,bFGF,PDGF)の発現をzymography,RT-PCR,Western blotting法で検索した。その結果腹膜高度転移株ではVLA-2,3,MMP-7,MT1-MMPが親株に比べ過剰発現していることが判明した。 2)ヒト腹膜中皮を大網から分離、マトリゲル上で培養することにより人工腹膜を試験管内で作成、この上でヒト胃癌細胞株とさまざまなサイトカインを培養し、腹膜播種転移を増強させるサイトカインを検討した。その結果、HGF,IL-8,IL-6は癌細胞の浸潤を促進させるが、TGF-βは促進させなかった。また抗integrin,α2,α3,β1抗体やTIMP-2(10mg/ml)は浸潤を有意に抑制した。このことはcollagen,laminin,fibronectinをコートしたプレート上でも同様であった。以上より1997年度には腹膜播種の形成にVLA-2,3,MT1-MMP,MMP-7が密接に関連していることが判明した。
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