周術期におけるCD3ζ分子の変動を検討し、担癌患者における手術侵襲とTリンパ球機能との関連について、シグナル伝達分子の視点から検討した。消化器癌患者を対象として、術前術後に経時的に採血し、比重遠心法によりリンパ球を分離の後、ζ分子を中心とするシグナル伝達分子の発現をIntracellular stainningし、フローサイトメトリーにて定量化した。その結果、右開胸胸部食道全摘、膵頭十二指腸切除術などの大手術侵襲例では、術前値に比べ、第2、3病日でCD3ζの発現は有意に低下し、第7病日で術前値に回復する傾向にあった。surface CD3発現も同様に術後有意に低下したが、第7病日に術前値には回復せず低値のまま遷延した。さらに、このCD3ζ分子の発現低下は、手術侵襲により活性化された単球/マクロファージ由来の活性酸素がそのmediatorであることが判明した。さらに、この手術侵襲由来マクロファージが、T細胞apoptosisを惹起することも判明し、現在この機序につき検討中である。
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