ヌードマウスに継代中のヒト胃、大腸癌株4系の肝転移モデルを同所移植により作製した。これらの癌株全てにおいてnorthern blot analysisによりVEGF mRNAが発現し、またELISAによりVEGF蛋白が産生されていることが明らかとなった。4株を同所移植した後、移植後10日目より治療群はVEGF中和抗体100μg/mouseを、対照群には生食水を腹腔内に隔日投与したところ、4系全ての腫瘍株の移植腫瘍に対して有意な成育抑制効果を認めた。またTK-4以外の3系において個体数(肝転移を有する個体数/総数)の比較において有意な抑制効果を認めた。個体数で有意差を認めなかったTK-4においても肝転移結節数の比較において有意な効果を認めた。治療群ではむしろ良好な体重増加がみられ、VEGF中和抗体投与による副作用を認めなかった。またVEGF中和抗体投与により、消化器原発内分泌悪性腫瘍の有意な腫瘍成育抑制効果および肝転移抑制効果も認めた。 VEGF中和抗体腫瘍組織中の微小血管の状態を免疫組織染色により検討したが、VEGF中和抗体投与群では腫瘍血管は対照群に比較し未発達であり、定量的検討により治療群で有意に微小血管数が減少していた。さらに腫瘍細胞のアポトーシスの誘導が認められ、このことがVEGF中和抗体の主たる作用機序であることを見いだした。 VEGF中和抗体による抗血管新生療法は胃、大腸癌のみならず消化器癌に対し有用な治療法となりうるものと考えられた。
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