安全な広範肝切除を目的とした門脈枝塞栓術の基礎的および臨床的研究

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09671298
• 研究種目: 基盤研究(C)
• 研究機関: 名古屋大学
• 研究代表者: 梛野 正人 名古屋大学, 医学部, 講師 (20237564)
• 研究分担者: 上坂 克彦 名古屋大学, 医学部, 助手 (20283434) ; 金井 道夫 名古屋大学, 医学部, 助手 (50242871) ; 宮地 正彦 愛知医科大学, 医学部, 講師 (80242874) ; 神谷 順一 名古屋大学, 医学部, 講師 (70194975) ; 二村 雄次 名古屋大学, 医学部, 教授 (80126888)
• キーワード: 経皮経肝門脈枝塞栓術 / 肝門部胆肝癌 / 胆嚢癌 / 肝切除術 / 術後肝不全 / 肝再生

研究概要

本研究の目的は経皮経肝門脈枝塞栓術に関する基礎的および臨床的研究により、広範囲肝切除術、特に黄疸肝に対する肝切除術の安全性を向上させることにある。
初年度における研究実績は以下の通りである。
臨床的研究実績:1)今まで手技的に困難とされてきた右三区域の門脈枝塞栓術が安全に行えるようになり、現在までに17例の症例に応用し良好な手術成績が得られた、2)門脈枝塞栓術前後における門脈血流速度の変化を超音波Doppler検査により測定した結果、門脈血流速度の増大が大きい程、塞栓術による非塞栓葉の肝再生が良好に起こることが明らかになった、3)門脈枝塞栓術前後における胆汁中のhHGFを測定した結果、その増加の程度と実際の肝切除術後の肝機能とが比較的良く相関することが明らかになりつつある、4)門脈枝塞栓術前後には塞栓葉の動脈血流がほぼ瞬時に増大することが血管造影下CT検査から明らかになった、などである。
基礎的研究実績:ラットを使った門脈枝結紮の実験から、1)結紮葉ではapoptosisが惹起され萎縮が起こるが、apoptosisのmediatorとして細胞膜のスフィンゴ脂質が極めて重要な働きをしている、2)非結紮葉における肝再生様式はDNAポリメラーゼの変動上は肝切除術後の肝再生とほぼ同様である、3)非結紮葉におけるミトコンドリアDNAの変動から門脈枝結紮は充分な肝再生を引き起こしうる、などの点が明らかになった。

研究成果

• [文献書誌] Nagano M, et al.: "Preoperative transhepatic portal vein embolization for impaired residual hepatic function in patients with obstructive jaundice." Journal of Hepto-Biliary-Pancreatic Surgery. 4. 373-376 (1997)
• [文献書誌] Takeuchi E,Nagino M, et al.: "Human hepatocyte growth factor in bile." Hepatology. 26. 1092-1099 (1997)
• [文献書誌] Goto Y,Nagino M, et al.: "Doppler estimation of portal blood flow after percutaneous transhepatic portal vein embolization." Annals of Surgery. (in press).
• [文献書誌] Nagino M, et al.: "Segmental liver resection for hilar cholangiocarcinoma." Hepato-Gastroenterology. (in press).
• [文献書誌] Hamahata N,Nagino M, et al.: "APACHE III,unlike APACHE II,predicts posthepatectomy mortality in patients with biliary tract carcinoma." Critical Care Medicine. (in press).
• [文献書誌] Nagino M, et al.: "Immediate increase in arterial blood flow in emblized hepatic segments after portal vein embolization." American Journal of Roentgenology. (in press).