研究概要 |
(1)C_3Hテネイシン(TN)遺伝子欠損マウス(雄性・10〜12週齢・体重:20〜25g):TN-/-群と(2)C_3H野生型マウス(雄性・10〜12週齢・体重:20〜25g):TN+/+群,にそれそれ肝切除(Higgins&Andcrsonの70%肝切除)を施行。術前,術後1,2,3,5,7,14,21,24日に犠牲剖検し,(1)残存肝の各種細胞外マトリックス分子(TN,I,III,IV,VI型コラーゲン, ヘパラン硫酸プロテオグリカン,フィブロネクチン,ラミニン,ビトロネクチンなど)の免疫組織染色を行い,特に類洞壁細胞,肝実質細胞あるいは細胞間のマトリックスなどを中心としてその発現部位を同定,(2)電顕所見からこれら発現部位の形態的変化を観察して細胞外マトリックス分子の発現と小葉再構築との関係やそれにかかわる伊東細胞の役割を検索して,細胞外マトリックスの残存肝再生ならびに小葉再構築に対する関与を検討した。 その結果,(1)TNは肝切除後の肝再生に対し促進的に作用することが判明したが,他の細胞外マトリックス分子の肝再生制御機構に対する関与は明らかではなかった。(2)免疫組織染色・電顕所見による残存肝における小葉構築と細胞外マトリックス分子発現との関係を検討すると,TNは肝切除後早期(24時間以内)に再生肝の類洞壁,特に伊東細胞に強い発現を認め,その後7日間に渡り徐々に発現が減弱することが判明し,細胞外matrixにありなからTNの発現が肝細胞増殖および小葉構造再構築に強く関与することが示唆された。一方,他の細胞外マトリックス分子残存肝での発現はいずれも増強しており,残存肝再生にこれらも関与していることがうかがわれ,またTN欠損マウスではTNの発現を他のマトリックス分子が補完・代償する可能性が示唆された。
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