研究概要 |
目的:先行する虚血ストレスが肝虚血耐性を向上する機序を明らかにするべく、heat shock protein (Hsp) 70の発現と肝類洞微小循環障害の病態から検討。 実験モデルと実験群:Wistar系雄性ラット(8〜10週齢)を用い、門脈バイパス非併存下に全肝流入血行を庶断し、一定時間後に再灌流する温虚血モデルを作成。初回虚血群(20,30,40,45分虚血)と再虚血群(初回の20分虚血7日後に再び45分虚血)の2群に分類。 検索項目:1週生存率,肝機能,肝組織血流量,Hsp70発現(免疫染色,Western b1ot),アポトーシス(TUNEL)など。 成績:再虚血群の1週生存率は45分虚血でも83%生存(初回虚血群;20,30分ではともに100%,40,45分では全例48時間以内に死亡)。 1.肝機能:初回虚血群に比し、再虚血群のGPT,ヒアルロン酸値は有意に良好に推移。 2.肝組織血流量:再虚血群ではno reflow現象を認めず、門脈圧上昇も軽微。 3.肝組織所見:初回虚血群では類洞内で白血球の集積と内皮細胞の破壊が著明でアポトーシスも強く認められたのに対し、再虚血群ではこれらの所見が明らかに軽微。 4.Hsp70発現:再虚血群で6時間後で最も強く、肝細胞、内皮細胞に発現。また初回虚血群20分では軽度に発現したが、2nd hitである45分再虚血でその発現は増強。 以上より、ischemic preconditioningにより肝温虚血許容限界拡大が可能で、その機序としてHsp70発現による肝微小循環障害の軽減は、内皮細胞障害の保護、肝細胞を含めたアポトーシスのregulationと密接に関与すると考えられた。この点を今後は動的解析、培養系での検討から分子生物学的に展開していきたい。
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