目的:sublethal stressとして一過性肝虚血を負荷し、あるいはストレス蛋白誘導剤Geranyl-geranyl-acetone(GGA)投与により設立される虚血耐性が、肝虚血限界を拡大する可能性を明らかにする。さらに肝微小循環障害のcytoprotective effectsや耐性機構をin vivo〜in vitroで動的にも解析し、小腸でも同様に検索して本研究を総括。 実験群と方法:wistar系雄性ラット(8週齢)を用い、門脈-静脈バイパス非併存下で肝流入血行遮断し、温虚血モデル作成。20分初回虚血7日目あるいはGGA200mg/kg・体重経口投与7日後に限界を超えた45分虚血施行。1週生存率、肝機能(GPT、HA)、肝組織血流量、heat shock protein(Hsp)70やNF-kBの発現、肝組織アポトーシスの観察、類洞内血流の生体顕微鏡による動的解析、培養系でのNO動態などを検索。尚、小腸虚血は上腸間膜動脈遮断30分のsublethal stress負荷7日目あるいはGGAの同様な投与14日後限界90分虚血施行。 成績:1.肝温虚血45分で全例が48時間以内に死亡したのに対し、preconditioning群では1週生存率がそれぞれ83%、75%と有意に改善。2.preconnditioningにより、45分虚血後再潅流による肝細胞障害、類洞内皮障害は機能的にも形態的にも軽微で、肝組織血流量も早期に正常化し、肝細胞や内皮細胞のアポトーシスを有意に抑制。3.preconnditioning群のHsp発現は、肝温虚血再潅流直後から6時間で、non preconditioning群に比し著明に発現し、動的解析でも肝類洞微小循環障害は軽微。4.NF-kBは、Hspより遅れて発現し、preconditioning群では有意に低値かつ短時間の発現。5.iNOSによるNO合成型の抑制を認め、Hsp高度発現例ではiNOS発生を制御。6.小腸温虚血限界(90分)も、preconditioning(30分初回虚血7日後あるいはGGA投与14日後の再虚血90分)では生存率の向上、Hsp発現増強、小腸粘膜アポトーシスの抑制を有意に観察可能。 結論:ischemic preconditioningにより、肝類洞内皮細胞の保護、肝微小循環の改善が得られ、肝温虚血限界拡大を可能にした。その機序として、(1)Hsp70発現増強が、NF-kB機能を抑制し、再潅流6時間以降に発生するiNOSによるNOのhigh output合成系をdown-regulateし、アポトーシスを制御、(2)再潅流6時間以内でのeNOSの機能維持に作用する、ことなどが示唆された。一方、肝のみならず小腸でも同様の虚血耐性を獲得する現象が認められ、これらの事実は、臨床応用により、侵襲下での臓器障害の軽減を期待して、臓器大量切除や移植などにも大いに貢献するものと思われ、この方面での研究が一層注目できる。
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