研究概要 |
本研究により末梢血中肝癌細胞をAFPmRNA,膵癌、胃癌細胞をCEAmRNAで,大腸癌細胞をCytokeratin20mRNAで,食道癌細胞をSCCmRNAで捕らえることが可能であることが明らかとなった。また膵癌においては門脈血中においても高率にCEAmRNAが検出され、食道癌においては術前末梢血中癌細胞陰性症例において術中癌細胞が陽性になる症例が少なからず認められ、術中癌細胞の血中への揉みだしの危険性が示唆された。その検出感度は血液1ccあたり1個から5個であった。症例の一部においては磁気細胞吸着により末梢血中癌細胞の同定を行い、免疫染色によりその存在を確認した。現在食道癌においてprospectiveにfollow up中であるが肝癌、胃癌、膵癌、大腸癌においてそれぞれAFPmRNA、CEAmRNA,Cytokeratin mRNA陽性率と再発率との相関が高いことが明らかとなった。一方、化学療法施行例においては末梢血中癌細胞の陽性例がほとんど無く、また化学療法により陽性例の陰性化が認められることから、化学療法の有効性が示唆されたが、化学療法剤の種類、量、投与期間などについては今後の検討が必要である。血中癌細胞陽性症例における臨床病理学的所見および分子生物学的所見の詳細な解析を行うとともに、血中癌細胞の存在を再発の危険群としてどの様に加療していくかが今後の課題である。
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