研究概要 |
(1)肝硬変、肝腫瘍動物モデルによる肝内リンパ球の免疫能の解析について、 ドンリュウラットを用いてチオアセタミド(200mg/kg)腹腔内投与により肝硬変モデルを作製し、さらに同種腫瘍細胞(AH66F)を肝臓に接種し、担癌モデルを作製した。これらの肝臓の門脈潅流液,及び末梢血よりそれぞれ,末梢血リンパ球,肝内リンパ球を分離して、抗腫瘍活性、細胞内グルタチオン濃度を測定した。肝硬変ラットでは、正常肝ラットと比較すると、肝内リンパ球の細胞内グルタチオン濃度の低下と共に、抗腫瘍活性の低下を認めた。正常肝ラットに比べ、肝硬変ラットにおける移植肝癌は発育増大を認めた。N-アセチルシステイン(NAC)の腹腔内投与により肝硬変ラットの肝内リンパ球の抗腫瘍活性が回復した。NACとIL-12の併用投与は、IL-12単独群に比べ肝硬変ラットの移植肝癌の発育が抑制された。 (2)ヒト肝癌例における肝臓内リンパ球の免疫能の解析においては、 肝細胞癌の外科的切除肝から同様に肝内リンパ球、末梢血リンパ球を分離し、生体肝移植ドナー肝を対照として、抗腫瘍活性、細胞内グルタチオン濃度を測定した。肝細胞癌症例では、対照群と比較すると、肝内リンパ球の細胞内グルタチオン濃度の低下と共に、抗腫瘍活性の低下を認めた。NACとIL-2との共培養は、IL-2単独群に比べ肝細胞癌症例の肝内リンパ球の抗腫瘍活性を有意に増強できた。以上より、細胞内グルタチオン肝内リンパ球の抗腫瘍活性に強く関与していることが推測された。上記の結果を基に、次年度はNACとIL-12の硬変肝内リンパ球の抗腫瘍能に対する協調効果を、In vivo(ラット)、In vitro(ヒト)で検討するとともに、グルタチオンにより活性化される還元制御蛋白グルタレドキシンの発現や活性化の程度を検討する予定である。
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