アポトーシス実行機構の最下流に位置するyama/cpp32遺伝子を癌に高発現させた後に低容量の抗癌剤を投与することにより、正常細胞の障害を少なく強い抗腫瘍効果を得る新たな癌遺伝子治療法を確立することを目的として研究を行った。 まず数種類の癌細胞株にyama/cpp32遺伝子をリポフェクション法にて導入すると、遺伝子発現単独ではアポトーシスを誘導しないものの、抗癌剤であるVP16を惹容量投与するとアポトーシスが激しく誘導された。低容量VP16のみではアポトーシスは誘導されなかったため、yama/cpp32遺伝子がアポトーシス誘導に寄与していることが判明した。また肝癌モデルラットに、adenovirusを用いてyama/cpp32遺伝子に発現させた後に低容量VP16を静脈注入すると、Yamaの活性が上昇し、肝癌細胞にアポトーシスが誘導され、最終的に腫瘍の縮小が見られた。yama/cpp32遺伝子単独や、VP16単独では抗腫瘍効果は得られなかった。 同様の抗腫瘍効果は、VP16の代わりに放射線を照射した際にも観察された。一方、yama/cpp32の上流でアポトーシスを抑制するBcl-2を過剰に発現しておくと、yama/cpp32遺伝子導入の効果は得られなかった。従って、yama/cpp32遺伝子を用いた遺伝子治療はBcl-2低発現腫瘍において効果的に機能すると考えられた。
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