研究概要 |
び慢性食道平滑筋腫の病因、平滑筋の分化増殖とIV型コラーゲンの関係を分子生物学的に解明することを目標として研究実施計画に基づき研究を行なってきた。 1.アルポート症候群合併び慢性食道平滑筋腫(DL+AS)患者遺伝子変異解析 我々はDL+AS患者においてCOL4A5/COL4A6遺伝子の上流17kbに及ぶ欠失を同定し、その詳細な切断点を解析した。その結果、欠失にはトポイソメラーゼI型、II型の関与が考えられた。また、この患者は体細胞モザイクであった。この欠失は既に報告されている症例で最小のものであり、DL+ASの発症機序解明に有力な手がかりになると考えられる。 2.アルポート症候群合併び慢性食堂平滑筋腫患者平滑筋腫の免疫組織学的解析 上記DL+AS患者の食道平滑筋腫摘出及び腎組織基底膜をIV型コラーゲンα鎖特異的モノクローン抗体を用いて染色した。α5(IV)鎖,α6(IV)鎖は腫瘍組織の大部分において染色されなかった。このことはCOL4A5/COL4A6遺伝子の欠失した平滑筋が優位に増殖したことを意味する。腎臓ではα3(IV)鎖,α4(IV)鎖,α5(IV)鎖,α6(IV)鎖はそれぞれ正常と比較して分節状に染色され、遺伝子の欠失がモザイクであることを支持した。以上項目1,2.の結果はAmerican Journal of Human Genetics (1998)誌に掲載予定である。 3.IV型コラーゲンα6鎖(col4a6)ノックアウトマウスの表現型解析及び4.DL+ASモデルマウス作製準備 col4a6ノックアウトマウスでは生後約1年後においても食道及び他の平滑筋臓器に平滑筋腫は見つかっていない。COL4A6遺伝子のみの欠失ではDLが発症しない可能性を示唆しているといえる。COL4A5/COL4A6遺伝子col4a6遺伝子第2イントロン欠失あるいはヒトDL患者の欠失部位を元にしたcol4a5/col4a6両遺伝子欠失マウス作製を検討中である。
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