研究概要 |
ヒト培養癌細胞H1299(肺癌)、DLD-1(大腸癌)、LoVo(大腸癌)、SAOA-2(骨肉腫)に,p21遺伝子発現アデノウイルスベクターAd5CMVp21でp21遺伝子を過剰発現させると、細胞周期停止を来たし、また細胞の膨化や核に対する細胞質の比率の増加などの形態学的な変化が観察された。これらは、老化/分化に特異的な変化であり、すべての細胞が老化マーカーであるβ-galactosidase活性が陽性となり、H1299、DLD-1、LoVo細胞ではTRAPアッセイによるテロメラーゼ活性の低下が認められた。さらに、食道癌細胞TE-1、TE-3では、p21遺伝子導入により扁平上皮癌の分化マーカーであるinvolucrinの発現が増強した。involucrinプロモーターを持つルシフェラーゼ・レポーター・プラスミドの導入実験により、このp21のinvolucrinの発現増強作用はtranscriptionalなものであることが明らかになった。また、TE-1扁平上皮癌細胞とヒト正常上皮細胞にアデノウイルスベクターによりp21遺伝子を導入すると、TE-1細胞では一過性のdormant phaseの後に急速にアポトーシスが誘導されたが、正常上皮細胞では増殖停止にともなう緩やかな細胞数の減少が観察された。この反応性の違いは、p21遺伝子導入の遺伝子治療としての臨床応用を考えた場合に、非常に有用であると思われる。
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