研究概要 |
1. 肝切除+ET投与での肝再生の状態の検討 ラット70%肝切除群とラット70%肝切除+ET腹腔内投与群(1mg/kg)を作成し,術後3日後,7日後に肝再生指数を検討した。Ki-67の染色性が不良のため、PCNA染色にて検討した。肝再生指数 ={(PCNA陽性細胞数÷全細胞数)×1001}(%) 肝切除群では3日27%、7日17%であったが、肝切除+ET群の生存例では16%、10%と低値で、ET投与により肝再生が抑制されていた。 2. 分子生物学的レベルでの検討 ラット70%肝切除群,ラット70%肝切除+少量ET腹腔投与群(30μg/kg)、ラット70%肝切除+大量ET腹腔投与群(1mg/kg)を作成し,術後3,6,12,24,48,72時間後に残存肝を一部凍結保存後Northern blot法でHGF,c-metのmRNA量を測定し比較した。肝切除群ではHGFは術後12時間頃から発現し、24-48時間でピークとなり、これと同期する形でc-metが発現していた。少量ET投与群では、発現量がそれぞれ増加する傾向を認めたが、大量ET投与群では、HGF発現の開始とピークが遅延し、c-metの発現時期に遅れる傾向にあった。以上から、肝切除後の少量のETは肝再生を促すが、大量のET投与はHGF等の肝再生因子の発現を遅延させ、肝細胞の受容体c-metの発現時期に遅れるために肝再生が抑制されることが明かとなった。おそらく、ET投与による肝のKupffer cell等が反応し、炎症性サイトカインが動員されるために、HGF産生が抑制され、肝再生の遅延が生じ、結果的にET投与群での死亡率の増加の原因と推察され、今後さらに詳細の検討を行う予定である。
|